2021年9月10日に開発予定地を視察してまいりました。
メガソーラー開発の計画地奈良県山添村。
豊かな水源林、そして土葬文化を守ってきたこの村に、81ヘクタール(甲子園球場およそ21個分)もの広大なメガソーラー発電所計画が進められているということで、代表理事の高田宏臣、地元陶芸家の吉岡萬里氏、理事の髙田敦子と来島由美の4名で視察に訪れました。
現状把握、そして地球守としてできることの可能性をお伝えするため、限られた時間でしたがその分濃い意見交換ができましたこと、以下にご報告いたします。
まず山添村の村民の方から現状の説明を受けました。
向井氏によると、35年前の林地開発許可はゴルフ場開発としておりたもの。その許可を今回のメガソーラー計画に強引に継承して進めようとしていることに対する大きな疑問、不信感が地元の住民の間では拭えません。
建設に反対する理由を三点にまとめてご説明いただきました。
① 水の安全性が失われる。
(小中高、そして給食センターが利用している水源が計画地の中にある。)
② 樹木の伐採後、垂直高25~30mほどの盛土の計画がある。
(2021年7月3日に発生した静岡県熱海市の土砂災害のような惨事を招きかねない)
③ この地特有の貴重な自然環境や希少な生き物などの生態系が壊れることへの危惧。
(なかでもクマタカは大変希少な猛禽類とのこと)
いずれも取り返しのつかないことである、と強い危機感をみなさん共通にお持ちでした。
次に高田から、急遽山添村を訪問することになった理由をお伝えしました。
「2年前、奈良視察の際、山添村には土葬地の調査で訪れ、この地に残る土葬文化のすばらしさに感動しました。おそらくこの文化が残っている日本で最後の地かもしれません。住民の方々の故郷に対する愛着が深く、この地に還ることで次世代へ豊かな大地を受け継ぐ大切さを理解していらっしゃると感じとっていました。それだけに、メガソーラー発電所が建設されることを、多くの人々に伝え、この地を守らねばという思いで訪問させていただきました。開発の件を知らせてくださった奈良・長谷寺在住の陶芸家・吉岡萬里さんは、2年前の奈良視察の際、現地案内をしてくださった経緯もあり、なんとか村民の方に繋がれたらとご尽力いただきました。こうして向井さんをはじめ皆さんにお会いできる縁をいただけてとても感謝しています。地球守として、この問題の本質を世の中に投げかけ、山添村だけの問題ではないことも微力ながらも発信し続け、影響を与えることができたらと思っております」
水源地であり、メガソーラー発電所計画予定地の視察へ。山添村には貴重な水源地が数か所点在しており、山々を潤し大地を涵養しながら、村民の方々にとって大切な飲み水として利用されています。
万が一開発が始まってしまったら、山頂部の尾根を掘削した残土がどのように扱われるか。大型車が道を走行するだけで、土の構造の変化につながり、道路ごと崩れる可能性をもたらすことなど、要所ごとに高田の解説にも熱がこもります。皆さん真剣に聴き入っていらっしゃいました。
広代区の共同の土葬地の視察も行いました。
最近は火葬されたお骨を土に還す埋葬になりつつあるそうで、この墓地でも最後の土葬は5年前だったであろうとのことでした。隣近所の協力や5日間もの時間をかけて行う弔いの儀式をわざわざ行うことの意味を、村民の皆さんとともに振り返る機会となりました。
自然との関わり合いが薄れてしまったことから現代の簡素化された葬儀に移り変わっていったのでは…… と思い思いに語り合いました。短い時間でしたが共有できたことをうれしく思います。急傾斜の尾根筋に土葬墓が見られることが多いのですが、こちらは民家のすぐ裏手の小高い丘の中。樹々に守られつつ風の通りもよく、居心地が良い墓地。
村民の方も「きれいでしょう。この周りでとれるタケノコは育ちもいいし、すごく美味しいですよ」とおっしゃっていました。
きっとこの土葬可能な環境によって、自律した循環を保てている。その恩恵なのでしょう。
山添村役場で、6日の村長選で当選されたばかりの、野村栄作村長と面談し、高田の『土中環境』と自然読本①~④を進呈させていただきました。
メガソーラー発電所建設問題は、村民の安全な暮らしを守るために最重要課題であること、野村村長もしっかりと受け止められていると思います。今後のご活躍に期待しております。
山の環境改善も同時に抱えた課題ですが、村民の皆さまが希望をもって活動できますよう、今後どのような形でお力になれるか、地球守スタッフや支えてくださる方々とともに考えてゆきたいと思います。
今回の視察も、地球守支援者の方々よりお寄せいただいた、地球守活動基金を一部活用させていただきました。
ご報告も兼ねてお礼を述べさせていただきます。ありがとうございました。
レポート/理事・来島由美