2022年3月 千葉県長南町 古民家環境改善活動報告

2020年夏から高田造園設計事務所、地球守が継続して環境改善に関わってきました、千葉県長南町の個人邸古民家で、2022年3月4日と5日の2日間連続して環境改善のワークショップを開催いたしました。地球守の自然読本③『古民家の環境つくりの作法』では、表紙モデルと取材地として大変お世話になっている現場です。

初日・4日の冒頭挨拶する代表理事・高田とお施主さん。

裏山を控え、段状地形の下の平坦地に築100年の大きな木造家屋が立つ現場は、毎回といって良いほど伝統的な土木造作が発掘され、その度に先人の環境を育てる知恵に驚き、次の100年につなぐ造作を参加者のみなさんと大いに学ばせていただいています。

U字溝下に現れたかつての溝を、U字溝を逆向きにして、水が浸透し、涵養される環境を守った。
かつて掘られていた溝の両脇は石積みの護岸に。裏込めには落ち葉、藁をグリ石とともに詰める。


今回も敷地内の蔵から谷地に向かう溝に埋められたU字溝を重機で掘り返す作業を行なっていると、地下1メートル近いところに、先人たちがつくった素掘りの溝がくっきりと現れ、一同から感嘆の声が上がりました。代表理事・高田の指導のもと、土中の水と空気が動く場としてこの溝を守るために、焼杭を底打ちした上にU字溝を逆にはめ、その周囲を石や瓦と藁、落ち葉などの有機物で敷葉(しきば)にして仕上げていきました。側面は石積みや、梢丸太を重ねて焼杭で井桁にし、生きた浸透装置として守るよう施工しました。

流れ込んでいた池の際の泥をさらうと、縁に地元で「青岩」とよばれる粘板岩の石積みが現れた。
弁天池でトウキョウサンショウウオを発見。バケツの中に避難してもらい、施工後に池に返した。


長屋門に近い弁天池でも、大量の泥をさらって池の輪郭が現れると、地元で「青岩」と呼ばれる泥岩でつくられた、かつての護岸の石積みが側面に現れました。周辺環境の悪化によって流れ込んだ泥が取り除かれると、泥岩と泥岩の間からは、澄んだ水が湧いていることを確認。ここでも先人の施工を生かし、泥岩の上に石を積んで護岸工事を収めました。弁天池には焼杭を何本も打って土中の水の動きを促しています。

裏山から恵みの水が湧き、生活の中でいただき、それを自然に返す。ここでその営みを取り戻そうとしているお施主さんの情熱に多くの方が賛同し、楽しく継続している現場である。

次回はゴールデンウィークごろを予定。



延べ60名近いご参加の方々とともに体感した伝統土木のすばらしさ。今回も学びの多い2日間となりました。お施主様ご一家のあたたかくホスピタリティにあふれるお人柄もあり、発見と感動の尽きない貴重な現場には、千葉県内や関東近郊だけでなく、中部、四国、北陸、九州からご参加いただくことも珍しくありません。
自然の理(ルビ ことわり)と共存するように建てられた日本の民家を、どのように次世代に住みついでいけるだろうか? 歴史ある民家の環境をどうしたら安全に守っていけるだろうか? そのような切実な思いを持つ日本全国の方々が、高田から具体的な技を学ぶだけでなく、参加者の方同志で情報交換をする場としても育っているように思います。次回はゴールデンウィークの開催を予定。今後も、この古民家環境が再び息づいていく様子をお伝えして参ります。

今回、2日間のうち初日の仕事を、地球守活動基金によって一部ご支援いただきました。
継続して活動を支えてくださっている支援者のみなさまに、心より御礼申し上げます。