三重県松阪市飯高町 風力発電建設予定地視察のご報告

2021年9月12日 三重県松阪市に計画されている、風力発電建設予定地の視察をさせていただきました

訪れたのは、松阪市の最深部で奈良県境にも近いところ。松阪市飯高町の森地区の蓮ダム周辺に位置付けられている計画地


乙栗子(おとぐるす)、加波(かば)から栃谷、青田(おおだ)にかけて一直線上に尾根が続く比較的、車で行きやすいエリア。案内してくれた、角館さん、大形さんが、下調べをして選定してくれました。

当日朝、集合場所で

以前、代表理事の高田が視察した青森県津軽での体験。平地の農村地帯に設置された高さ100mを超える発電機の足元に10秒ほど立つだけで、身の危険を感じ、離れてから15分たっても、頭の中がグワングワンとするような影響が残ったと話してくれましたが、こちらはさらに高い183mを超える最大級の発電機を、しかも山の尾根筋に設置する計画があるとのこと。

情報交換をしながら現地へ向かいます。

山道に入り、車を進めると、谷筋には谷を埋める盛り土が。

この辺りは林業が盛んで、林道の数と比例するかのように砂防ダムが多く、ダムの堆積をさらう作業も多いことが考えられますが、そのほか多くの大型車がどこからか砂や土を運んでいる形跡もあるとお聞きしました。

松阪視察3

作業道や市有林を皆伐した場所の周囲では、崩落があちこちで起こっています。

大きな石を手作業で避けながら車を進めました。


山自身が山の環境を悪化させられたことを認識すれば、山が自らつまった部分を流して、山を健全化していくことが起こることは必然。それは、視察を通してひしひしと感じ、そこにいる全員が皆共通の認識を噛み締めました。

この辺りの岩盤は層状になっている特徴的な石。
剥離して隆起を繰り返し、その隙間が水や空気の流れをスムーズにして、
泥を引っ張っていない、綺麗な水が滲み出ています。

その様子を見ると、山が生命体であり、いのちの源である事を感じる事が出来ます。そしてこの岩場に木がある事で周辺の潤いを保ち、水の湧き出しを守っているのですが、木がなくなると一気に乾燥が進み、岩の崩落をとめる事は出来ないでしょう。

予定地の現状を見れば見るほど、風力発電機の設置は非現実的で、取り返しのつかない破壊という言葉しか思い浮かびません。

松阪視察9

時々立ち止まりながら、また車中で、色々な話しが出来ました。

地域では、賛成派の地権者、反対派、興味関心を持っていない方、様々な立場の人が近所で入り混じっていて、個人の主張を表明しにくい状況とのこと。
地域の財産として環境を守りたい地元の人、素晴らしい自然環境を求め移住をしてきた角館さんや大形さんのような若者など、危機感を感じた人たちが地域内で知識を深めたり意見交換をする場を設ける活動を重ねています。


『反対という強い動きではなく、地元の人が動いていくための原動力は、山の大切さを皆と思い出して、土地の大切さを再認識していけるような働きかけをしていきたい。』と、大形さん。

代表の高田からは、『これを認めてしまったら、国土に住める場所がなくなってしまうという危機感を持って、強い気持ちで、動き続けていく事も大切。この機会を、広めていく事、みんなに知ってもらってみんなで考えていくきっかけにして、動き出す地元の人たちに協力ができるように、地球守も出来る事をしていきましょう。注目を力に変えていきましょう。』と、伝え、熱い言葉も交わしました。

丁寧に手探りで動き出しているお二人も、『気持ちが明るくなった』と言ってくださり、高田と現地を歩く事で、改めて地元の山の魅力や自然の神秘を体感して、『今後この飯高町の美しい自然、全国に誇れる環境の素晴らしさを発信したい』と、角館さん。

反対活動ではなく土地を守る意識で進めることで、土地を傷める取り返しのつかない破壊はきっととめられる。それどころか、地域の絆や魅力を高める方向に持っていくことができると感じさせてくださいました。

今回の視察のきっかけとなったのは、今年8月、この計画を知り、短い期間で事業者への意見提出の呼びかけや取り纏めに仲間と動いていた角館さんと知人であった理事の1人が、他の理事に呼びかけを依頼したところ、高田代表他、地球守に関わる多くの方が意見書の提出をしてくれたところから。

山から戻ってから、地域で風力発電について考えようという働きかけをしている、成岡さんご夫妻を訪ねました。成岡さんご夫妻も都会から移住されており、ゲストハウスを経営されています。こちらでは平飼い鶏、烏骨鶏の卵の販売も。

今回の視察で、地域の方々に溶け込みながら、地域の本当の魅力を体感し、子供達のために、未来のためにできることをしていきたいという方がたくさんいらっしゃることに、私たちは逆に勇気づけられましたし、そこにいないからこそ出来ることもたくさんあることにも改めて気づくことができました。

私たちはそこで暮らす人と共に現状や課題を見つめ、想いを受け取り、発信し、かけがえのない自然環境を守ること、それは安全で安心できる日々の生活を守ることとお伝えしていきます。賛同してくださる多くの方との輪を広げ、ダメなものはダメと伝え、明るい未来を創造していくことに必ずつなげていきたいと考えています。

今回の視察にご協力いただきました、皆様。本当にありがとうございました。

後日、角館さんが視察地周辺を改めて歩き、新たに発見した素晴らしい滝の写真もご紹介します。


また、この視察にかかる交通費等の一部は地球守活動基金から活用させていただいております。
おかげで複数人での参加が可能となり、短期間でも濃い内容の視察を実施することができました。


地球守の活動にご理解ご協力くださる皆様に、心より感謝申し上げますと共に、
引き続きのご支援を何卒よろしくお願いいたします。

レポート 理事・髙田敦子